99年3月に飲んだワイン,ベスト3!プラスアルファ

 今月も水戸の泉町にあるNAO'S BARで良いワインに出会うことが出来ました(またもや入り浸たっている,という話もある?). 今月は何といってもデュクリュ・ボーカイユの垂直テイスティングが出来たのが嬉しい!この話はベスト3とは切り離して書くことにします.また番外編として「飲んではいけない(あるいは早々に飲んだ方がいい)グラン・ヴァン」の話も.まずは,デュクリュ・ボーカイユの垂直テイスティング以外のベスト3から…

第1位:シャトー・ピション・バロン,82年

産地:ボルドー,ポイヤック
飲んだ場所:ワインハウス・レニエでの持ち込みワイン会,99.3.7

コメント:最近では最も偉大な年の1つに挙げられる82年,これは期待通りの素晴しい出来だった.外観は深いルビー色で非常に濃い印象.香りは開栓直後より華やか.カシスなど甘い果実香がたくましく,スパイス,モカ,土の匂いも.82ならではの臭さ(全体の強い香り)がよく出ている.抜栓後もこの強い香りは衰えず,6〜7時間後も続いていた.味はアタック強く甘みも十分で,まだまだ強さも残っている.あと10年は行けそうな勢い.敢えて言えば骨格の強さが目立っており,複雑性がもう少しほしいところか.アフターは果実の香りが非常に長い./87年にAXAが買収し,J.M.カーズがプロデュースする前までのバロンはやや評価が低いようで,値段も82にしては考えられないほど手頃でした(ボルドー直送で送料,税金込みでも¥10000ほど).コストパフォーマンスは素晴しいと思います.ちなみに日本の某店では99年3月現在¥32000もしているのにはびっくりしました.これはいくらなんでも高すぎる!

第2位:ムルソー・クロ・ド・ペリエール,90年

産地:ブルゴーニュ,コート・ド・ボーヌ,Albert Grivault
飲んだ場所:ワインハウス・レニエでの持ち込みワイン会,99.3.7

コメント:2月にただのムルソー・ペリエールを飲んで感激し,クロの方も買った(→2月のベスト3).これは本当に堪能させてくれた.非常に濃い黄金色に少し緑色の入った外観.香りは複雑.甘い果実の蜜(ゴールデンデリシャス系)が主体で,白いきのこ,マッシュルーム,土っぽさ,ナッツの香り.時間が経つと(田崎さんのいう)カフェオレの香りも出てきた.この複雑さがムルソーの真骨頂.味は十分に濃縮され,甘みも強く酸味もほどほどでバランスが絶妙.味はさすがに2月に飲んだペリエールとは比較にならないくらい濃く,凝縮していた.最後はリンゴを擦り降ろしたような香りになった.これぞムルソー!と一同感激した./このクロはペリエールの中にある0.9haのグリヴォー単独所有の畑.たぶんこれはグランクリュといってもいいでしょう.

第3位:ペリエ・ジュエ,ベル・エポック,90年

産地:シャンパーニュ,Perrier Jouet社
飲んだ場所:北島亭(四谷),99.3.19

コメント:軽いが泡立ちが美しく,コクや甘みまで感じる秀逸の出来.外観は明るい黄金色.泡ははじめ粗いがすぐに細かくなり,活発で長く細い.この泡立ちはサロン(→1月のベスト3)を彷彿とさせるほど美しい.香りが特徴的で,牛乳のような乳酸の香りに甘い蜜の香り,すなわちシャルドネのグランクリュのようなクリームやバターの香りまで漂わせており,セパージュでシャルドネが多いためなのかと思わせる.味はBrut,基本的には軽いのだが甘みやコクもあって,ただの水っぽい軽さとは一線を画す.アフターには柑橘系の果実も.瓶がまさにベルエポック,アールデコでインテリアにぴったり!/余談ですが北島亭(四谷)のお料理は本当に美味しい!です.しかもこのベル・エポックがフルボトルで¥10000なんて,ほとんど原価なんじゃないの?と思いました.良心的な価格設定に深謝!


そして…「デュクリュ・ボーカイユの垂直テイスティング!」

ヴィンテージ:75,78,83,86年
産地:ボルドー,サン・ジュリアン
飲んだ場所:NAO'S BARワイン会,99.3.28

コメント

1975年:総合力ではこれが最も長命だったかもしれない.外観は明るいガーネットにルビー色,少々オレンジのニュアンス.明るく美しく輝いている.香りは開栓直後はややクローズだったが,1〜2時間で全開(「むせかえる」ほど)となった.カシスやスパイスに西洋杉,鉛筆の芯,モカやタバコ.味も75とは思えないほどの若さがあり,甘みやボディの強さ,酸やタンニンなどの構成成分もすべて見事に調和している.ブラインドでやると80年代と言ってしまいそう.開栓後6時間まで,十分な力強さと調和を保っていた.あと10〜20年はいくでしょう.

1978年:これはピークだった.少し吹いたあとがあったので心配していたが,開栓直後より甘い果実とスパイスが全開!外観は明るいガーネット,澱を落としながら美しく明るく輝いている.香りは十分に開いており,カシスやスパイス,ハーブが少し.西洋杉やモカもあるが75や86に比べるとやや少ない.味は柔らかく,よく調和しているが,酸がやや少ない印象.吹いたせいもあるのか,開栓6時間後では香りが抜けて痩せてしまった.まさに今がピークといえる.

1983年:長熟タイプだがそろそろ飲み頃に来ている.まだ力強さもあるが熟成感も出てきていた.78に共通する造りでやや酸は少ない.4本(75,78,83,86)のうち最もハーブ(特にローズマリー)香を感じる.外観は濃いガーネット+ルビーにわずかのオレンジ色.香りは徐々に甘い果実やスパイスが開き,ハーブやモカの香りが充満!味は若いながらも酸が控えめで,柔らかさも持っている.これも衰えがやや早く,開栓後6時間では結構抜けてしまっていた.78に共通する造り.

1986年:これはまだまだ貯蔵すべき.非常に力強く凝縮されていて,75に共通する長熟力を有していた.外観は非常に濃いガーネット+ルビー色.香りは始め閉じていたが,次第に開き75に共通する「むせ返るような」香りの強さ.カシス,スパイス(強い),モカ,タバコ,ローストした樽の香り.さらに時間が経つと焼いた蜂蜜の香りも.味はアタック強く甘く,酸やタンニンがどっしりしていて,ヴォリューム感たっぷり.アフターも長い.ただし開栓6時間後ではやや香気ぬけしたところも.75とともに凝縮感は素晴しかった.


番外編「飲んではいけない(あるいは早々に飲んだ方がいい)グラン・ヴァン」

シャトー・デュアール・ミロン・ロートシルト,94年
産地:ボルドー,ポイヤック
飲んだ場所:自宅,99.3.15

コメント:ヒュー・ジョンソンさんの本で黙殺!されていた94ヴィンテージ,開けてみるとやはりその通りだった.グラン・ヴァンとは言えない出来.良く言えば軽いが,味がなく水っぽい.外観は既に熟成しはじめて明るいガーネットに少々の紫.香りはカシスというより酸っぱそうなラズベリーに,生肉臭さやセメダイン香まで混じって,さながらイタリアのVdTのよう.味はアタック少々甘いものの酸味が勝っており,全体に水っぽくて奥行きやコクに乏しい.ぼやけた感じ.これじゃ黙殺されても仕方あるまい.アフターにカベルネの香りがやや長いのと樽香が控えめだった(樽で誤魔化していない)のが救い.翌日は少々改善したものの,これ以上の改善や伸びは期待できないと思われる./94のメドックのカベルネはちょっとダメだったみたいです(収穫期に雨にたたられたらしい).うまく造ったシャトーもあるのでしょうが,デュアール・ミロンに関しては早めに飲んだ方がいいと思います…あるいは買わない方がいいかも.ちなみに私は97年12月に4800円で買ってしまいました.


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