〜このところ,ブルゴーニュの奥の深さにすっかりはまっている私ですが,この7月にあこがれのドメーヌを2つ訪問してきました.一つは優雅で洗練された白の造り手Domaine Leflaive(ピュリニー・モンラッシェ村),もう一つは私の大好きな赤の造り手Claude Dugat(ジヴリ・シャンベルタン村)です.
7月7日に成田を出発して,その日のうちにパリからTGVでリヨンまで到着.リヨンに1泊し,翌日(7月8日)レンタカーを借りてベルギーから来た友達夫婦とリヨン空港で合流し,コート・ドールを目指しました.ちなみにフランスのレンタカーはマニュアル車が多く,オートマはほとんどありません.あってもベンツの大きいクラスで,とても高価.もちろん左ハンドル,しかも初めてのルノー車で,バックギアの入れ方(ギアのシャフト部分を持ち上げる,という考えもつかなかった方法)が分からず,空港までバックなしに突き進み,合流した友達の奥様に教えてもらう始末でした.また,リヨン市内は一方通行だらけで,どこをどう抜けたか今だに分からないほど迷いながら空港までたどり着いたのでした.
リヨンから2時間弱でコート・ドールの南端に到着.まずはモンラッシェを始めとする,コート・ド・ボーヌの畑を散策.ちょうど週末にあたり,畑には誰も居らず,のんびりとした風景.畑名の入った看板はありますが,畑の中には造り手を示す標識はなく,どこまでが同じ造り手かは分かりません.が,どの畑も非常に良く手入れされて葡萄の木は整然と並び,日本でいうとよく手入れされたお茶畑のように美しい光景です.葡萄はちょうど実を着け始めている時期でした.
モンラッシェやバタールを代表とする特級畑は斜面の中間にあって,イメージしていたよりも実になだらか(写真はモンラッシェ).特級畑は斜面の上部にあって日当りがいいのかと思っていましたが,斜面の上の方は傾斜が急過ぎてプルミエやヴィラージュの畑になっていました(ニュイでも同様に特級は実になだらかな傾斜地となっており,例外はコルトンの丘だけ.コルトンはまるでスキー場のような傾斜でした).またピュリニーからミュルソー,ボーヌと抜けて行くにしたがって土壌の色合いも変化し,ピュリニーよりもミュルソーは粘土が多いのも一目で分かりました.もちろん同じ村内でも畑によって微妙に土の色や傾斜が違います.
この日はピュリニーの近くにあるシャニー(Chagny)村のオーベルジュLameloiseで,友達夫婦とディナーをとりました.ミシュラン3ツ星の実力派で,650フランのムニュでしたが,本当に美味しく,またすごい量で腹一杯になりました.世界中からお客さんが集まるようで,レストランは満席.ワインは地元Leflaiveのシュヴァリエ・モンラッシェ1992年と,Henri Jayerのヴォーヌ・ロマネ1990年.どちらも素晴しい味わいでしたが,特にLeflaiveは白のグレイトヴィンテージで,凝縮した味わいが印象的でした.
翌日(7月9日)はニュイの方へ出かけ,シャンベルタンなどの畑を見てから,友達夫婦をリヨン空港まで送りました.本当はドメーヌ訪問も一緒に行きたかったのですが,スケジュールが合わず残念.ここからは我々夫婦2人だけでドメーヌへ乗り込まなければいけません.この日を夢見て1月からフランス語を勉強してきたのですが,通じるかどうかでドキドキ.この夜はボーヌへ泊まり,翌日(7月10日)にいよいよ1軒目のLeflaiveへ.アポは11時30分だったのですが,やや早めに到着.でもどこにもLeflaiveの表札はなく,近くのホテルで場所を聞いてやっとわかりました.なんと村の中心にあるMarronier広場のすぐ脇にある大きな邸宅で,表札なんかなくても(誰でも)わかるだろ!という感じの堂々とした建物でした.
Leflaiveのアポは日本から直接手紙を書いたのですが返事なく(おそらく一見さんお断り,ということだったのでしょう),イギリスのワイン商からアポを取ってもらいました.個人の時間を大切にするフランスではアポは必須です.堂々とした建物の2階が事務室で,約束の11時30分に訪ねると「今日のアポは聞いてません」との返事.「うっそー!!」としつこく食い下がり,約束のファックスを見せると再度確認してくれ,やっと通してくれました.マネージャのマダムは留守でしたが,醸造責任者(chef
de caviste)のJean JafflinさんとアシスタントのSebastien Chauveさんに連れられて半地下のセラーへ.ここで98年ヴィンテージを4種類テイスティングさせてくれました(ACピュリニー,1級のClavoillon,同じくPucelles,特級のBienvenues-Batard-Montrachet).まだ若いのですが,果実味と酸,アルコールのバランスが素晴しく,樽香も控えめ(全て新樽30%のみ)でいずれも洗練された格調高い白でした.彼等は私がいろいろとコメントしても,「当然!」といった感じで「oui」しか言わず,自信に満ちた表情.造り方に差があるのかきいたところ,「村名ワインも1級も特級も造り方には差がない,あるのはテロワールだけだ」とのこと.畑を見学した後だけにとても納得できる言葉でした.ヴィオデナミ(バイオダイナミックス)を8年前から導入して,よりテロワール「らしさ」が現われるようになったとのことです.何本か売ってほしいと頼みましたが,直接販売はやっておらず,近くのcaveauで買ってくれとのことでした.彼等によると98年ヴィンテージは95や96,97に比べると若干軽く,飲み頃はやや早いようです.