Leflaiveでのデギュスタシオンにすっかり感激し,その日はジヴリ・シャンベルタン村へ泊まりました.翌日(7月11日)はいよいよClaude Dugatさんを訪問です.Dugatさんのワインには今年の正月に友人のO氏に飲ませてもらって衝撃を受けて以来,すっかり惚れ込んでしまいました(→1月のベスト).ただのACジヴシャンなのに,まるでクロ・ヴージョのような凝縮した果実味と芳香.有名なシャンベルタンを始め,ジヴリ・シャンベルタンのワインは薄くて名前負けだと思っていましたが,こんなすごい造り手がいるというのに驚きました.以来Dugatさんのワインを見つける度に飲んでいますが,いずれも期待を裏切らない出来で,いつかDugatさんのドメーヌを訪ねて話をしてみたいと思っていました.
アポは11時.前日に村の中を走って,Dugatさん宅を確認しておいたので迷うことはありませんでしたが,訪ねる少し前からあいにくの雨.ところがなんと約束の時間にDugatさん自ら建物の前まで傘をさして出迎えてくれたではありませんか!!!これには本当に感激.なんていい人なんだろう!どこの馬の骨かわからん東洋人を,しかも来るかどうかわからんのに,親切にも出迎えてくれるなんて!もう,出会いから感激でした.彼は笑顔が非常に素敵な方で,終始ニコニコ.Leflaiveと同様饒舌ではありませんが,素朴で優しい方でした.彼の元を直接訪れるclientは少ないらしく,遠いところをよく来てくれたと言わんばかりの歓迎振りでした.
建物はDugatさんのワインのエチケットにある通りの古い建物(1240年に建てられた,写真左上)で,1階には今年(2000年)用の新樽が積んでありました(写真右上).そして地下のセラーへ降りての試飲.始めにACジヴリ・シャンベルタンの垂直テイスティング.96,97,98年と3ヴィンテージを飲ませてくれました.98年は3月に瓶詰めしたばかりで,果実香がみずみずしくすでに美味しい造り.97年はややアルコール気が強く,野バラのような花の香りが特徴的.96年はバランスが素晴しく,今年の1月に飲んだのと同じ印象でとても凝縮していました.
これだけでも十分に満足したのですが,なんとここからが本番!99年ヴィンテージを樽から直接試飲!99年ヴィンテージは来年(2001年)3月に瓶詰めするそうで,まだ樽の中で熟成中です.99年は彼の言葉を借りるととてもいい出来のヴィンテージで,5種類飲ませてくれましたがいずれも素晴しい出来でした.ACジヴリ・シャンベルタンはまだ樽の中にあるのに,口当たり柔らかく,タンニンは多いのですがとても緻密.ベリーやプラムなどの果実香にあふれ,98年とはまた違った新鮮な味わいでした.ジヴリ・シャンベルタンのプルミエ・クリュはより凝縮され,少しアルコール(ボディ)が強い味わい.でも同様に口当たりは柔らかく,なんで出来て間もないのにこんなに飲みやすいのだろう?と思います.
次からが凄かった!1級のラヴォー・サン・ジャックからは外観が真黒!非常に凝縮した外観と香りで,ピノなのになんでここまで濃いのだろうと思います.味わいは外観に反して,やはり口当たり柔らかく,果実の自然な甘味にあふれていて,非常に凝縮して感じます.タンニンは多いのですが歯肉にまとわりつくような感じはまったくなく,実に滑らかで,アフターに心地よい樽香が長く残ります.わずかに5樽のみ.そして特級のシャルム・シャンベルタン.これも5樽のみ.十分に凝縮しており,ラヴォーよりはタンニンとボディがしっかりして,果実味にはあふれていますが,やや固い印象を受けました.そしてグリオット・シャンベルタン,Dugatさんの最高傑作.わずかに2樽.これは素晴しくうまい!こんなうまい赤ワインは飲んだことがない!香りは極上で,果実の凝縮した甘い香りとわずかの乳酸香がバランスよく調和して実にかぐわしい.外観はシャルムよりやや明るいガーネット.味も素晴しく,果実味にあふれバランスよく,果実の甘みやコク,酸,アルコール,タンニン全ての要素がよく溶け込んでいるところがすごい.舌触りは本当に絹のように滑らかで,香りは華やか.ボルドーで言えば,シャトー・マルゴーの極上ヴィンテージのような鮮烈さだが,マルゴーさえ凌駕するのでは?我を忘れてしまった瞬間でした.試飲の時はテイスティングしたら吐く(Dugatさんのところでは床が砂利なので,そこへ吐く)のがお約束だけど,グリオットはとても吐くことができない!!ほど美味しかった.
全部で1時間余のテイスティングでしたが,本当に至福の瞬間でした.彼によると,シャルムとグリオットの違いは(どちらがいい,という訳ではなく)やはりテロワールにある,ということです.シャルムの土壌は固く,生まれるワインは固く男性的(masculin).グリオットの土壌は柔らかく,生まれるワインは女性的(feminin).やはりここでもLeflaiveで聞いたのと同じく,偉大なテロワールが偉大なワインを生むというのを実感しました.新樽率は,村名もので60%,1級以上は100%で,年によって少し変えるとのこと.樽熟期間は16〜17ヵ月と,他(14〜15)よりはやや長めのようです.残念ながら,ここでも売ってもらうことはできませんでしたが本当にいい思い出になりました.樽からの試飲は,樽内のワインが過度に酸化する危険があるので醸造家は嫌がるものですが,ニコニコと快く飲ませてくれたDugatさんには本当に感謝!です.
ドメーヌを出てしばらくは感激と興奮で,しばらくボーッとしてしまいました.しばらくカフェで酔いを覚まし,この日はコート・ドールを離れてパリに出,7月15日に帰国したのでした.まだ勉強したてのフランス語で,込み入った話はできませんでしたが,また訪れてみたいものです.LeflaiveにしてもDugatさんにしても本当に田舎の農家なのですが,真剣に理想を高くもって造る姿勢には感動しました.世界を魅了するワインを造る人々と会って話ができ,本当に満足でした.