今年も第1四半期から飲みまくってます.いいワインに沢山出会いました.年始のおめでたワイン会に始まり,1月のラランド垂直ではそのエレガントな美味さを確認し,2月のサン・テミリオン特集ではシュヴァル・ブランが登場,3月の花粉症を吹き飛ばせではあの'00ムートンが開けられました(久々に翌日まで胸焼け).2月に仕事でフランスへ行ったついでにブルゴーニュへ再度立ち寄り,デュガさんの「幻」のシャペルを飲んできました(→スペシャルコメント).そんな中でのベスト3は,なんとポイヤック勢が…
産地:ボルドー,ポイヤック 飲んだ場所:医家管打ち上げ,03.3.9 コメント;自分の生まれ年のワインながらパーカー評価も55点と最悪だし諦めていたが,なんと素晴らしいワイン!中味がやや希薄で焦点がボヤけている感は否めないが,香りもエレガントで甘く,すごいのは開けてしばらく経っても香りや味が衰えないこと!外観はガーネットルビーで,オレンジ色のニュアンスはあるが,エッジにレンガ色はない.香りはドライフルーツに野の花の蜜,わずかにカベルネとわかるカシスやスパイス,なめし革.優しく甘い香りで,焦がしたカラメルも漂い,土やカビの匂いは皆無.しかも抜栓(さすがにコルクはボロボロ)してから2時間以上経っても香りがヘタらない.味はタンニンは十分に落ちて滑らかで,凝縮感はやや薄いが,全体にエレガントに熟成した造りだ.アフターに野の花の蜜. |
産地:ボルドー,ポイヤック 飲んだ場所:ポール,月例ワイン会,03.3.23 コメント;こりゃまたやられました,ヨネマス!またまたゴチになっていいんですか?羊を直接ボトルに書いちゃったムートン.すごかったっす.開栓したてからキャラメルにバタースコッチ(キャンデー)がフルスロットル全開.流行の右岸のすげーやつ(ラ・モンドットとか)あたりかと思っていたけど,まさかこれが出るとはね.中味ももの凄く濃い.カシスのジャムを煮詰めたものにキャラメル,バター,乳酸,ヴァニラを混ぜこんだような香り.胸焼けする喉越し.タンニンも緻密だが大量(スプーンですくって飲めるとパーカーが書いていた). |
産地:ボルドー,ポイヤック 飲んだ場所:ポール,月例ワイン会,03.1.12 コメント;さすがです!いつ飲んでも裏切られず,美味しくてすべてが調和したパーフェクトワイン.外観は深く美しいルビー色.開栓直後はやや閉じていたが,じわりじわりとグラスの中で広がり,豊かな果実香(カシスのジャムやブルーベリー)にスパイス(ペッパー,丁字),乳酸,獣肉,ヴァニラやカラメルに,ちゃんとポイヤックの証である鉛筆の芯(pencil
lead)や西洋杉が見事に調和している. |
03年第1四半期に飲んだワイン58本(種)
年,短評(値段vs内容);◎素晴しい ◯なかなか △いまいち ×ひどい,もうごめん
赤字は印象に残ったもの,または珍品
◎90 ボランジェRD;出たばかり,素晴らしい出来
◎90 ポル・ロジェ,キュヴェ・サー・ウィンストン・チャーチル;繊細,優美な出来
◎MV クリュグ,グランド・キュヴェ;いつもの素晴らしさ
○97 プイィ・フュッセ,テート・ド・キュヴェ,Verget;かなり熟成していた
◎98 ピュリニー・モンラッシェ,クロ・ド・ラ・ムーシェール,J.Boillot;気高き造り,美味!
○99 ヴォーヌ・ロマネ,ボーモン,D.Laurent;まだ固かった
○95 シャトー・ランシュ・バージュ;抜けるのが早い?
○NV モエ・シャンドン,ロゼ;危な気ない造り
○98 サンセール,P.Jolibet;バランスいい,特徴的
◎75 シャトー・オー・ブリオン;エレガント!熟成した美しさ
○92 シャトー・トロロン・モンド;この年にしてはよく造った
◎97 クロ・ド・タール;実力向上中!果実味あふれる
◎NV ボランジェ,スペシャル・キュヴェ;やっぱり大好きなメゾン
○97 シャサーニュ・モンラッシェ,シャンガン,M.Niellon;少し凝縮感に欠ける
○88 クロ(ド)ラ・ロシュ,Dujac;期待したほどの甘美さはなかった
◎NV アグラパール,GCブラン・ド・ブラン;美味しい!
◎94 ルーチェ;ブラインドでいつも「美味しい」と言ってしまいます
◎85 シャトー・ピション・ラランド;典型的なポイヤック,エレガントに熟成した
◎83 シャトー・ピション・ラランド;'85より凝縮,人なつこく愛想のいい造り
☆82 シャトー・ピション・ラランド;パーフェクト再確認(ベスト3)
○96 ピュリニー・モンラッシェ,コンベット,Leflaive;クリーンだがイマイチ,高値
△99 シャンボル・ミュジニィ,コンブ・ドルボー,Anne Gros;ブショネ?惜しい
◎85 コルトン・シャルルマーニュ,L.Latour;スズキのパイ包みにぴったり!
◎97 バタール・モンラッシェ,Verget;良い時のVergetの素晴らしさ!
○NV エグリ・ウリエGC(シャンパーニュ);香りはいいけど味はやや単純
△98 シャペル・シャンベルタン,Claude Dugat;幻のワイン→スペシャルコメントを参照
◎00 サン・ヴェラン,Antonin Rodet;激安(¥1280)なのになんでこんなに香りがいいの??
◎99 ニュイ・サン・ジョルジュ,プリュリエ,Lecheneaut;素晴らしい果実味の凝縮!
△95 シャトー・ラ・ガフリエール;青臭い,メルローの悪い面が出ている
○NV ド・メルシエ(シャンパーニュ);香り濃厚だが味は単純
◎93 シャトー・シュヴァル・ブラン;そりゃーうまいっすよ
◎95 シャトー・シュヴァル・ブラン;これまた素晴らしいです
◎99 シャトー・ラ・ゴムリ(サン・テミリオン);流行りもの,樽内マロやってるでしょ
◎95 テルトル・ロトブッフ;妖艶,獣肉系,サン・テミリオンのル・パンというのがよくわかる
○96 モレ・サン・ドニ,モン・リュイザン,D.Laurent;いまいち香り立たず地味
◎97 ジヴリ・シャンベルタン,クロ・サン・ジャック,Fourrier;上品,優美で美味!
○NV リュイナール(シャンパーニュ);軽めながら美味
○NV ボランジェ,スペシャル・キュヴェ;お気に入り
◎90 コルトン・シャルルマーニュ,L.Latour,マグナム;果実に富んだピュアな造り
×99 シャペル・シャンベルタン,Alex Gambal;期待したのにブショネ,ガーン
△99 プピーユ;閉じてきた
◎70 シャトー・パルメ;予想以上に熟成していた,エレガント
◎96 シャトー・オー・マルビュゼ;柔らかく甘美な出来
○99 ラ・フルール・ド・ブアール(ラランド・ポムロル);凝縮しポテンシャルすごい
◎00 シャトー・ベリ(カスティヨン);美味,ヴァランドローの妹
☆64 シャトー・ムートン・ロッチルド;感激しました(ベスト1)
○NV ヴーヴ・クリコ,イエローラベル;いつもの味わい
○97 ヴォーヌ・ロマネ,ボーモン,Leroy;香りあまり立たず,少々タニック
○95 サロン;シャープすぎる
○00 コット,グランド・エスコルハ(ポルトガル);若飲み,珍しい
○97 マルガリット,カベルネ(イスラエル);これまた珍品,レバノンのミュザールにも似てる
○99 イル・ボスコ(イタリアのシラー);パワフルだが中味が乏しい
☆00 シャトー・ムートン・ロッチルド;出ました,記念碑的ムートン(ベスト2)
○98 アルタディ,グランデス・アナダス(リオハ);凝縮,華やかさがもう少し
○98 モナステリオ(リベラ・デル・デュエロ);ボルドー右岸に似る
◎97 キスラー,ハドソン・ヴィンヤード;ナッティー,JFCの上を行く超凝縮したシャルドネ
◎99 シャトー・カノン・ラ・ガフリエール;凝縮した果実味,Neippergの本領発揮
△99 ニュイ・サン・ジョルジュ,クロ・デ・ポレ・サン・ジョルジュ,H.Gouges;タニック,いかり肩のピノ
スペシャルコメント
'98 シャペル・シャンベルタン,Claude Dugat
飲んだ場所:Les Millesimes☆, Gevery-Chambertin (Bourgogne)
飲んだ日付:03.2.13
コメント:'01年にDugatさんを訪問した時に知ったのだが,彼は特級のグリオットとシャルムの他にシャペルを少量造っている.ただし,土地の持ち主(proprietaire)はカナダの方で,生産の75%をカナダへ送り(メタヤージュ契約),残りをフランス国内へ出しているとのこと.この辺で飲めるのはレストラン・ミレジムだと教えてもらったので,次回ブルゴーニュへ行く時には必ずやミレジムで飲もうと思って,今回予約を入れた.食事の注文をしてから,ソムリエがワインリストを持ってきたので,迷わずこの事を告げたところ,'97と'98があるという.値段は240ユーロとめちゃ高い(約3万円).ミレジムのワインリストは比較的リーズナブルな値段が並んでいるだけに迷ったが,Dugatさんのシャペル目的に来たのだから仕方なく決断した.ソムリエにきくと'98の方が開いてきていてお勧めとのことで,'98を選んだ.
そして,待ちに待ったご対面.ラベルを見て感激.まさにDugatさんのChapelle Chambertin.そして,抜栓してもらってのテイスティング,香りはDugatさんらしく甘い果実香(ただしやや弱い)に心地よい樽のヴァニリン,そして味は…あれっ……,なんか薄いぞ…
ここでしばらく固まってしまった.Dugatの特級はいままで3回の訪問と国内とで味わってきた筈だが,こんな薄くて焦点のボヤけた造りには出会ったことがない.'98がいくら軽い年だからといって,例えば'98のシャルムも飲んだがこんなに希薄ではない.まるでACブルゴーニュに上品な樽で化粧したような造り.いや'98のACブルゴーニュも飲んでいるが,まだそっちの方が果実の凝縮感があったような….つまり,これには果実の凝縮が足りないだけではなく,アイデンティティの欠如=特級の力強さや複雑性がないのだ.酸はしっかりあるが痩せた感じのボディ,アフターも短く,弱々しい印象.
「なんか薄いですねぇ」とソムリエに言うと,「でもシャペルはこんな感じですよ」「でもフィネスがあると思いますけど」との答え.いや,自分にとって他の造り手のシャペルがどうのとか,フィネスがどうのということはどうでもいいのだ.Dugatさんが造ったワインに,彼の魂やアイデンティティが感じられないことがどうにも腑に落ちなかった.食事はそこそこの出来だったが,ワインにはまったく満足できず,これに3万も払ったかと思うと怒りまで込み上げてきて,次の日にこの疑問を解決すべくDugatさん宅を訪問した(もちろん事前にアポとってますが).
翌14日,約束の11時にDugatさん宅を訪問.いつものように笑顔で迎えてくれたDugatさん.'01年と'02年をいつものように樽からテイスティングさせてもらってから,昨日の件をお話しした.そして,疑問は解決!
彼は'97からChapelleを造っているが,proprietaireはカナダの方で,生産の75%をカナダへ送っているのは前述の通り.全生産量は2樽ほどで,全部で600本程度.そして,'97〜'99は畑の世話をそのproprietaireがやり,収穫と醸造のみをDugatさんが担当したそうだ.'00からはDugatさん自身が畑の世話をするようになったとのこと.つまり,'98の中味が希薄なのは葡萄の手入れに起因し(もちろんやや軽い年ではあるので気候のせいもあるだろうが),香りや樽はDugatさんのもの.中味と外側が解離していたのはそういう訳だった….彼は醸造に際して逆浸透膜とかsaignerとか近代的なテクニックは使わず,収穫したものをそのままワインにするので,葡萄のありのままの姿が出てしまうのだ….話が出たためか,'02のChapelleを樽から飲ませてくれたが,'98とは全く異なるワインだった.'02も軽い年ではあるが,まさに彼の味,彼のスタイル.凝縮した果実に溢れる素晴らしいピノであった.やはり他の人の手入れした葡萄では彼のスタイルを100%発揮できないのだ.
ちなみに'99と'00のシャペルはそれぞれ2〜3ケースこの3月に日本へ出荷すると言っていた.おそらく天文学的な値段になるだろうが,'99と'00では中味が違うだろう.ヴィンテージ的には'99の方がいいが,彼が畑をやりだした'00からの方が彼のアイデンティティを感じられるに違いない.
レストラン・ミレジムでは貴重な散財をしたということだろうか.でも疑問が解決できてよかったが….