99年11月に飲んだワイン,ベスト3!

 なんと私は8月末に飲みすぎが原因で急性膵炎にかかり,1週間ほど入院してしまいました.もともと酒にはそれほど強くなかったのに,徐々に酒量が増えてしまったのが原因でしょう.世の皆様,飲みすぎにはくれぐれもお気を付けてください.退院後は,低脂肪食と禁酒を続け,2ヵ月たってやっと解禁になりました.といっても,こんな経験はまっぴらなので,今後は酒の量を控えて,楽しみたいと思います.
 さて,復帰となった11月は全体に高品質のものばかり.特に11月14日に開いていただいた私の解禁記念ワイン会ではすばらしいワインたちを味わうことができました.この模様はバッカスのテイスティングルームにも掲載されています.お楽しみください.

第1位:リシュブール,1985年

産地;ブルゴーニュ,Henri Jayer

飲んだ場所;復帰記念ワイン会,ビストロ・シン,99.11.14

コメント;伝説の造り手,ジャイエが造ったブルゴーニュの傑作!彼のワインは初めての経験だったが,とにかく「旨い!」素晴しい造りで,目をつぶって飲むと良い年のポムロルといってもよい感じ.パーカーの言う通り.
 外観はエッジにわずかのオレンジ色を交えた濃いガーネットルビー.ピノとしては例外的に濃い.香りはプラムのシロップ煮やブラックベリー,蜂蜜やカラメルなど,これ以上は考えられないような果実の熟した香り.全体に甘い果実香が支配していて,良いポルトを思わせる.安いポルトなんか吹っ飛んでしまいそうだ.その中に樽のヴァニラが入って,エキゾチックさも出ており,香り全体がまとまって延髄を直撃する!ここまで凝縮し,香りの濃いピノは初めてだ.肉臭さは出ておらず,果実香に溢れたもの.味はアタック強く甘く,果実の甘みがゆったりと広がる.コクも十分で,酸が適度に効いており,バランスは絶妙.タンニンは多めなのだろうが細かくこなれており,果実分をよく引き立てている.アフターにヴァニリンオークが少々感じられるが,嫌味はない.4時間たっても衰えず,まだまだ飲み頃は続きそうな勢いだった.
 除梗100%で,果実分だけで勝負しているのは第3位のMeo-Camuzetにも通じる(MeoはJayerがコンサルタントなので当然)が,欲を言えば「素直すぎる」.でもそれはぜいたく,
とにかく「美味しい」ことと「凝縮した果実味」の究極をいくことだけで拍手を送りたくなるワインだった. Jayerの引退前の作品だが,もう二度と味わうことはないかもしれない.とても貴重な体験だった.NYで$700弱で入手.

第2位:ムルソー・ルジョ,1992年

産地;ブルゴーニュ,Coche-Dury

飲んだ場所;復帰記念ワイン会,ビストロ・シン,99.11.14

コメント;こちらも第1位にしたいくらい,素晴しいワインだった.これでACムルソー(プルミエではない)であるところが恐ろしい. Leflaiveの特級ものにも通じる造り.実に格調高く,よくまとまったバランス.シャルドネの完成形の一つといっても過言ではなかろう.
 外観は明るい黄金色にわずかの緑が混じる.香りは実に甘く,ゴールデンデリシャスの蜜にカラメルや蜂蜜.その中に青リンゴの様な清々しくみずみずしい酸を連想させるような香りが全体をよくまとめている.キノコの香りやカフェ・オレ・フレーバーはまだ出てこない.1982年のボルドーのように,「世紀の年」といわれるブルゴーニュ白の1992年は,やはり年をとらないのだろう.味はアタック強く甘く,酸も適度で実にバランスが良い.全体にシャルドネの甘みが広がって文句なしに美味しい.アフターに樽香がわずかにのこる程度.非常に優雅で,バランスのとれた素晴しいムルソーだった.今年3月に飲んだグリヴォーも濃厚,複雑で素晴しかったが,Coche-Duryはもっと優雅に熟成していくだろう.飲ませてくれたムッシュに深謝!

第3位:クロ・ド・ヴージョ,1988年

産地;ブルゴーニュ,Meo-Camuzet

飲んだ場所;自宅, 99.11.3

コメント;妻が「なんでこんなに甘いの?!」というほど,果実の甘みにあふれた造り.妻の両親と義理の兄夫婦を自宅に招いての食事会で飲んだ.外観は濃いガーネットルビー.ほとんどボルドーのメルローの色に近い.以前飲んだ95年のACヴォーヌ・ロマネも濃かったことを思い出した.エッジに少々のレンガ色.香りはダークチェリーの完熟やプラムのシロップ煮など過熟の果実香に満ちあふれている.獣肉の香りは少ない.新樽100%にしては樽香がほとんど目立たない,それほどに果実香が強いのだ.味はアタック強く甘い.果実の甘みが十分で,葡萄のよく熟した甘みを楽しめる.低酸で,色のわりにはタンニンが少なく,コクも十分.アフターに樽のヴァニラと果実香が続く.
 100%除梗のためであろう,やや複雑性に欠けるが,この凝縮感と果実味には脱帽!さすがMeoだ(クロの中でも一等地,良い場所).この年のピノは本当によく熟したのであろう.欲を言えば,梗を少し入れてタンニンや複雑さを出してくれれば,今飲むときにもっと奥の深さを感じたかもしれない.この造りだとおそらく若くても美味しかったであろう.しかし熟成して複雑さが出たり脱皮していくタイプではないように思う.わずかな水っぽさを感じてしまうのは贅沢だろうか?でもこのワインには素直に美味しいといえる美点があり,拍手を送りたい.とても楽しめた.空瓶は義兄のお土産になったので,ここには載せていません.


99年11月に飲んだワイン21本(種)

年,短評(値段vs内容);◎素晴しい ◯なかなか △いまいち ×ひどい,もうごめん

◎90 ローラン・ペリエ,キュヴェ・グラン・シエクル(シャンパーニュ)
◎97 ドメーヌ・ド・トレヴァロン白(VdP,ローヌ):5月のベスト3
◎88 クロ・ド・ヴージョ,Meo-Camuzet(ブルゴーニュ)
◯97 サンチャゴ・ルイーズ(リアス・バイシャス,スペイン)
◯90 エール・ド・リューセック(ACボルドー白)
◯88 シャルボー,サーティフィケイト,ブラン・ド・ブラン(シャンパーニュ)
◯94 シャトー・ピション・ラランド(ポイヤック,ボルドー)
◯95 ブラニー・プルミエ・クリュ,Leflaive(ブルゴーニュ)
◎92 ムルソー,ルジョ,Coche-Dury(ブルゴーニュ)
◎85 リシュブール,Henri Jayer(ブルゴーニュ)
◯NV アラン・ロベール(シャンパーニュ)
◎89 ヴーヴ・クリコ,グラン・ダム,ロゼ(シャンパーニュ)
◯89 シャトー・ラフォリー・ペイラギ(ソーテルヌ)
△94 ドメーヌ・ド・シュヴァリエ(ペサック・レオニャン,ボルドー)
◯99 ボジョレ・ヴィラージュ,プリムール,Drouhin(ボジョレ)
◯85 シャトー・フィジャック(サン・テミリオン,ボルドー)
×96 ACブルゴーニュ,ル・ボン・バトン,P.Leclerc(ブルゴーニュ)…タンニン強すぎ,濃すぎる
◯95 フィクサン,クロ・ナポレオン,Gelin(ブルゴーニュ)
◯96 ニュイ・サン・ジョルジュ,クロ・ド・ラ・マレシャル,Faiveley(ブルゴーニュ)
◯96 フランク・フェラン(サン・テステフ,ボルドー)
△94 シャトー・ベイシェヴェル(サン・ジュリアン,ボルドー)

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