今月は1月の反動か,ややレベルの低い月でした.楽しみにしていた持ち込みワイン会も,名前負けの感あり.ソムリエールの扱い方にも不満があり,不完全燃焼でした(最後のコラム参照).その中で,ぶっちぎりのベスト3はこちら!また,2月13日のNAO'S BARワイン会(新世界のプレミアワインとヴァランドロー対決!)の詳細なレポートはバッカスのテイスティングルームにも掲載されています.
産地:ボルドー,サン・テミリオン 飲んだ場所:NAO'S BARワイン会,00.2.13 コメント;幻のシンデレラ・ワイン,しかもその最上のヴィンテージと言われる95年は,期待に違わず素晴しいものであった.新世界のプレミアムワインとの比較試飲をしたが,もう別格!すばらしい洗練,上品,優雅,凝縮,芳香.外観からすでに王者の風格があり,深く濃い真紅色.澱が落ちて,美しく輝く宝石色だ.香りは非常に凝縮しており,特徴的なのは「ジャムを塗ったトースト」の香り.すなわち,強く焦がした樽に由来すると思われるトーストの香ばしい香り,さらにカシスやブラックベリー,プラムのジャムにカラメルや蜂蜜,少々のメープルシロップ香,バターなど.これらが一体となって,焼たてのトーストにバターとジャムを塗ったような香りになっているのだ.味はアタック強く甘く,果実の甘みとコクが十分に広がる.酸もしっかりしていてバランもよい.あえて言えば,果実味と樽香のバランスでやや樽香が勝っているようだが,嫌味ではなく上質のフレンチオークで,心地よい.これが熟成したら,ちょっと樽香だけ浮いてしまいそうな心配もするけど,非常にエキゾチックで個性的,ユニークだが唯一無比のワインと呼べるであろう.時間がたつと,さらにカラメル香が強くなり,ますます個性的であった.現在,都内の某店では180000円で売っているが,そこまでの価値があるか?は飲む人次第. |
産地:ブルゴーニュ,Drouhin 飲んだ場所:ブルゴーニュワイン会,00.3.22 コメント;素晴しい造りで,MontrachetのMarquis de Laguicheを彷彿とさせる.外観はやや濃い黄金色に黄色が混じり,透明度は高く美しく輝く.香りは開栓当初から芳しく,黄リンゴ(ゴールデンデリシャス)の蜜や焦がしたカラメル,クレーム・ブリュレ,カステラの底の甘いところを思わせる芳香.少々の乳酸臭さもある.香り全体のまとまりがよく,香り高い.味も香りから想像する通りで,厚みと甘み,パワーのある素晴しいもの.アタック強く甘く,果実の甘みは十分,酸やボディのアルコールがしっかりしていて,バランスもいい.アフターにやや強めの樽香が心地よく広がる.以前飲んだ89のMontrachet,Marquis de Laguicheの延長線にある造りだが,Montrachetとの違いは,果実の甘みが少し足りない点か.しかしパワフルなコルトン・シャルルマーニュらしさは十分出ており,価格(アメリカで$79)から考えても素晴しい造りだと思った. |
産地:アルザス,Z.Humbrecht 飲んだ場所:自宅,00.2.26 コメント;さすがHumbrecht!アルザスでは一番ひいきの造り手.外観は輝く黄金色にわずかの緑.まるで蛍光ペン(?)のような輝き方で,透明度も高く美しい.香りは濃厚.グレープフルーツの甘いゼリーやコンポート,洋梨.トロッケンベーレンアウスレーゼのような甘く濃くやや酸の効いた味を連想させる香り.また,ジャスミンや少々のパッソンフルーツ,白桃,黄桃,パイナップルなど甘そうな果実も連想させる.味はアタック強く甘く,果実味が十分.果実の甘みが口一杯に広がり,コクがあってフルボディ.酸はしっかりしているが目立たず,しっかりしたボディとともに全体のバランスを支えている.味全体は甘いというよりは,甘みをアルコールがしっかり受け止めている感じで,濃厚な辛口である.アフター長く,後口にわずか苦みが残るのがトケイの特徴.以前にVieilles Vignesを飲んだが,VVの方が甘みは強かった.Grand Cruではないものの,他の造り手のGrand Cruをはるかに凌駕するであろう. |
00年2月に飲んだワイン36本(種)
年,短評(値段vs内容);◎素晴しい ◯なかなか △いまいち ×ひどい,もうごめん
△95 ACブルゴーニュ,Hubert de Montille
◯90 エルミタージュ,ラ・シズランヌ,Chapoutier
△NV ドゥ・マスパラン,ブランケット・ド・リムー
◎96 プイィ・フュッセ,テット・ド・クリュ,ル・クロ,Ferret
△95 キャンティ,Granducato
◎88 ニュイ・サン・ジョルジュ,ヴィーニュ・ロンド,D.Rion
△95 シャトー・ムーラン・ラ・ローズ,サン・ジュリアン
◯ イスカイ
◯ セーニャ
◎95 シャトー・ヴァランドロー
× プロヴィダンス‥有機が裏目?
△95 ACブルゴーニュ,Claude Dugat
◯99 ボジョレー・ヌーヴォー,J.Duboeuf
◎87 クロ・ラ・ロシュ,Dujac
△NV ランソン,ブラックラベル(1/2)‥やっぱりシャンパーニュは大きな瓶で
◯NV ピペール・エドシェク
◯97 ムルソー(AC),Verget
◯96 ヴォーヌ・ロマネ(AC),Mongeard Mugneret
△98 マ・ド・ドマ・ガサック(白)
△94 コルトン・シャルルマーニュ,Jean Philippe Marchand
◎90 コルトン・シャルルマーニュ,Drouhin
◯89 コルトン・シャルルマーニュ,Bonneau de Martray
◎93 コルトン・シャルルマーニュ,Leroy
×96 ヴォーヌ・ロマネ,オー・シャン・ペルドリ,Pernin-Rossin‥妙に濃すぎてダメ
△NV ボランジェ(1/2)‥やっぱりシャンパーニュは大きな瓶で
◎95 トケイ・ピノ・グリ,クロ・ウィンズブール,Z.Humbrecht
◯85 ボランジェ,RD1985
△87 シャトー・ラヴィユ・オー・ブリオン
◯79 ムルソー,ナルヴォ,Leroy
◎97 ジヴリ・シャンベルタン,Claude Dugat
◯94 シャンベルタン,A.Rousseau
◯90 ミュジニVV,Comte de Vogue‥保存悪し?
◯78 シャトー・グリュオー・ラローズ
◯64 シャトー・オー・ブリオン‥ソムリエの扱い方に不満.残念.
△93 シャトー・ディケム‥若すぎた
◯95 プイィ・フュメ,Pascal Jolibet
ここで緊急コラム!
古いワインをデカントする時は?
悲しい思いをしました.2月26日に開いたワイン会(皆で持ち込むワイン会)で,私はバースデーヴィンテージの64年シャトー・オー・ブリオンを持ち込みました.それも,当日持ち込んだら澱が舞ってしまうだろうと考え,9日前にそのお店(某フランス料理店)へ持っていき,保存をお願いしたのでした.
さて,ワイン会当日.計9本の,名前はすごいワインばかりが並び,まあまあ上質のフランス料理を味わいながら,どんどんワインは空いていきました.最後の赤2本は私の担当.9日前に入れておいたので,準備は万全と思いきや,ホストテイスティングもないまま,いつの間にか64オーブリオンはデキャンタに入れられているではありませんか!!そして,注がれたワインはもう開きすぎていて,枯れた土の味わいしかしませんでした.空き瓶の香りにはまだ果実香が残っており,おそらくは不要なデキャンティングが64オーブリオンを殺してしまったと思います.
その店のソムリエールはそれなりの知識をお持ちで,古いワインのことも知っているだろうし,もちろんオーブリオンも知っているはず.会の主催者(私ではない)との打ち合わせがあったかどうか分かりませんが,何の疑問もなくいきなりデキャンティングしたのは何故でしょう?ホストテイスティングして,デキャンタすべきかどうか決めるのが,客の権利(義務)ではないのでしょうか?
デキャンティングにはご存じの通り,澱を取り除く意味とワインを開かせる意味があります.日本のソムリエ教育でもこのくらいのことを教えてはいるでしょうが,どうも古いワインはデキャンティングするという知識が先にきてしまうようです.しかも対象になっているワインの良さや資質をよく考えて,客にアドヴァイスするのがソムリエの役目.知識だけで勝手にデキャンタージュしたとすれば,そのソムリエの高慢な振る舞いとしかいいようがありません.今回の場合,パニエから直接注いだらきっと枯れる寸前の輝きが味わえただろうに,と考えると残念でたまりません.
この件があってから,ますますソムリエという資格が信じられなくなりました.もちろん,プロですから敬意を表するべきですが,もともと日本のソムリエ資格は経歴審査が簡単過ぎて信用していません.こういうことがあるとますます落胆します.もちろんその店には二度と行きません.