堀 俊輔(ほりしゅんすけ,茨城交響楽団音楽監督)

 1950年大阪生まれ。早稲田大学英文科をへて東京芸術大学指揮科を卒業。その後の活躍はめざましく、読売日響、新星日響、大阪フィルなど各地の主要オーケストラの客演を重ねる。1987年より秋山和慶氏の推薦を受け、東京交響楽団に指揮研究員として入団。1991年9月東響創立45周年世界ツアーに指揮者として同行。10月にはニューヨーク州シラキュース交響楽団定期演奏会を指揮してアメリカデビューを飾った。今後世界に活躍する気鋭の指揮者として期待されている。軽妙なエッセイ集(「ヘルベルト・フォン・ホリヤンのモーツァルトは振るべからず」カワイ出版刊)は大好評。1992年より茨城交響楽団音楽監督。「オラトリオ東京」主宰。現在フリーで活躍中。


ヘルベルト・フォン・ホリヤンの舞台裏(パート5)〜第74回定期演奏会プログラムより
 わが茨響もヘルベルト・フォン・ホリヤンとつきあって、もう5年目になる。5年目にもなると、ホリヤンの手の内もだんだんわかってきた。まず、初合わせは(速い曲は)絶対速くやる。それを見越して今回は速く練習しておいた。そしてなんとか棒についていくと、ほんのちょっぴりホメル。このホメ方が実にウマい!「なんや、今回は随分エエやんか。ようやく茨響も心を入れ替えて、やる気になったんか。エエなあ、この調子や。」ここでわが茨響も馬鹿なもんで、倦怠期にささやかれた愛の言葉の如く、有頂天になってしまう(ウブだねえ、まったく)。と思いきや、次の練習では手厳しい。「だめや、全然。もっと楽譜を深く読みなさい(なぜか標準語)」茨響も有頂天になっていた自分に、はっと気付いて反省する。そして「音楽は楽しいものやないんや。音楽は追究あるのみ」と禅宗の坊様のようなことを諭された後、「フランス音楽のコツは大胆にやることや」と一筋の光明を与えて下さる。うまくいかなくて怒りが込み上げてきても「だんだん最近、戦闘意欲がわかなくなってきて…」とお茶目に流してみせる。
 世の男性諸君、これでっせ、これ。まさに人との付き合いはこれにつきまっせ!長く付き合いたいと思ったら、いい人になっちゃああきまへん。時には甘くささやき、時には厳しく突き放す。シビアになりすぎる時はユーモア(下ネタはあかんで)でかわし、はっとするような格言(実はさっき読んだ本の一節)をさらりと言い放つ。ホリヤン流付き合い術は無敵ですわ。5年目になってもまだまだ奥が深くて、読み切れまへんわ。初めて会った頃より少し髪が増えたような気がするこのごろですが……(アホ、大きなお世話や!一堀談)

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